「全然普通の人に見えるよ。ちょっと体調を崩しやすいだけじゃない?」会社の人からそう言われるたび、私は笑顔で「ありがとうございます」と返しながら、心の奥底で絶望していました。
障害者雇用で法務部に配属されて2年。周囲の善意や「普通」という評価が、今の私には何よりも苦しい。
なぜなら、その「普通」という仮面の下で、私は誰かを怒鳴りつけ、殴り飛ばしたいほどの強烈な「加害衝動」を必死に抑え込んでいるからです。
今回は、双極性障害の私が「普通」を演じ続けて迎えた限界と、2年前の自分に伝えたかった「福祉介入」について、書き残したいと思います。
「正確さ」が絶対の仕事で、私が一番怖かった言葉
私の仕事の大半は、契約書の捺印申請の受付でした。契約書の形式的な不備を見つけたり、社内ルールに則っているかを確認したりする、いわば「会社の最後の門番」のような役割です。
躁状態の時の私は、おおむね完璧でした。
ちょっと辛くても、誤字脱字をちゃんと見抜くことはできましたし、なにより営業さんや子会社の方ともちゃんとコミュニケーションが取れていました。
しかし、一年たった頃から集中力が続かなくなったり、コミュニケーションが苦しくなりました。この頃から抑え切れないイライラに悩むことが増えた気がします。
ある時こんなことがりました。
体調が悪いなら簡単な仕事を。という配慮で、Excelに書かれた数字の並びを数十個、複写用紙に書き写す作業をすることになりました。
が…
何度やっても失敗してしまうのです。
気がつくと、ミスった複写用紙が山のようになっています。それを見た先輩が「これ、、どうしたの?間違えちゃったの?」と聞いてきました。
私は苦し紛れに「こういう作業、苦手なんですよね」と言い訳しましたが、先輩は「前はできてのにね」と動揺されていました。
「前の自分」が優秀であればあるほど、「今の自分」との落差に絶望する。上記のようなミスが立て続けに続いて、ミスが許されない事務職に就いたことを少しだけ後悔しました…
「通訳」がいない孤独。福祉介入を後回しにした代償
「ことこさん、何が辛い? どうしてほしい?」
先輩は優しく聞いてくれました。でも、私は答えに詰まってしまいました。
そのとき私の内側にあったのは、強烈な加害衝動。目の前の人を怒鳴りつけたい、すべてをぶち壊したいという、言葉にするのも恐ろしい衝動です。
これをそのまま伝えたら、この場所にはいられなくなる。そう思って遠回しに伝えても、「みんなイライラすることはあるよ」…と、本当の深刻さは伝わりませんでした。
2年前の私に、そして今、戦っているあなたへ
2年間、障害者雇用という枠組みの中で、私は必死に「普通」を演じ、期待に応えようとしてきました。でも、振り返って思うのは、最初から、プロに間に入ってもらうべきだった。
福祉相談員(または就労支援員・ジョブコーチなど)」を入れるメリットは、単なる「相談相手」ができることではなく、「自分と会社の間にある『ズレ』を埋めるプロを雇う」ことにあります。
福祉相談員を入れるメリットを下記にまとめました。
自分の代わりに「NO」を言ってくれる
会社から難しい仕事を頼まれたとき、自分で「できません」と言うのは勇気がいりますし、角が立つのが怖いですよね。相談員が間に立つことで、「今の彼女の病状では、この業務量はリスクが高いです」「この作業は避けるべきです」と、客観的な制限として会社に伝えてくれます。
プロが「ドクターストップ」をかける形になるので、角が立ちません。
プロの言葉で代弁してもらえる
躁状態の時の異常行動は、自分一人で会社に伝えると「性格の問題」だと誤解される可能性があります。
相談員が「これは本人の性格ではなく、病気の症状(混合状態など)による、コントロール不能なエネルギーの表れです」と会社に説明してくれるため、あなたが悪者にはなりません。
周囲の「誤解」を解き、適切な距離感を保てる
「普通に見える」「良くなったね」という周囲の言葉は、時に当事者を追い詰めます。
相談員から会社へ、「外見が落ち着いて見えても、内面では激しい疲労と戦っています」「今の『元気さ』は無理をしているサインかもしれません」と伝えてもらうことで、会社が勝手にハードルを上げるのを防ぐことができます。
まとめ
もし今、この記事を読んでいるあなたが、かつての私のように一人で歯を食いしばっているのなら、どうか、「自分の苦しみを翻訳してくれる存在(福祉介入)」を頼ってください。
自分の人生を守るために、逃げることや、プロに頼ることは、決して「負け」ではありません。2年分の疲労が押し寄せている今の私から、心からのアドバイスです。


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